商売を行っていれば、売掛金が未回収のままだったり、商品を売ったり工事をしたのに代金を支払ってもらえなかったりということが多々あるでしょう。
また、商売でなくても、お金を貸したのに返してもらえなかったり、離婚した相手から約束した養育費が払われないケースもあります。
そのような時に一番心配なのは、未回収の債権をきちんと回収することができるかどうかだと思います。
今回は、未回収の債権をきちんと回収するための方法について、詳しく解説していきます。
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債権回収とは?
債権回収の方法について解説する前に知っておかなければならないことは、債権とは何かということです。
債権とは、特定の人が相手方に特定のことをさせる権利のことをいいます。
一方、特定の人が相手方に特定の行動をする義務のことを債務といいます。
すなわち、A社がB社から商品を購入した場合、A社はB社に対し金銭を支払う義務(債務)を負って、B社から商品を受け取る権利(債権)を得ることができるのです。
反対に、B社はA社から金銭を受け取る権利(債権)を得て、A社に商品を引き渡す義務(債務)を負います。
このように、商取引などにより代金を支払ってもらったり、お金を返してもらえる権利を持っている人を債権者といい、代金を支払う義務やお金を払う義務を負っている人を債務者といいます。
従って、債権回収とは、債務者が支払ってくれない現金や売掛金などを債権者が回収することをいうのです。
債権回収を成功させるために行うこと
お金を払わない理由の確認
債権は当たり前ですが、回収しなければなりません。
しかし、回収できないということは、何かしら理由があることが考えられます。
債権回収を成功させるためには、まずは何故お金を払わないのか理由を確認する必要があります。
なぜなら、お金を払わない理由によって、最適な回収の方法が変わってくるからです。
お金を払わない理由として一番多いケースは、手元に払うお金がないという場合です。
お金が手元になければ当然債権を回収することは困難ですが、不動産などの固定資産を所有していたり金融機関に預貯金があるかもしれません。
そのため、手元に払うお金がない場合は、相手方の財産の状況を調査する必要があるのです。
もっとも、この調査は初めて取引をスタートする時に、行っておくべきものです。
他にもお金を払わない理由としては、買った商品や依頼した工事などに不満があるケースも考えられます。
この場合は、ただ払って欲しいことを伝えるだけでは支払ってはもらえません。
裁判などの法的措置を行わなければ、解決できない可能性が高いです。
このように、お金を払わない理由を確認することで、それぞれの理由ごとに債権回収に対する最も良い対応方針を選択することができるのです。
適切な債権回収方法の選択
債権回収を成功させるためには、適切な回収の方法や順番を選択することも大切です。
回収の方法の順番はまずは一般的な債権回収を求める方法を選択し、回収できない場合は法的手段で債権回収する方法を選択するのが良いです。
一般的な債権回収を求める方法は以下になります。
- 電話やメールや訪問をして催促する。
- 内容証明郵便による催告書を送る。
法的手段で債権回収する方法は以下になります。
- 民事調停の手続を行う。
- 仮差押えの申立てを行う。
- 支払督促の申立てを行う。
- 訴訟の提起を起こす。
- 強制執行手続を行う。
一般的な債権回収を求める方法や、法的手段で債権回収する方法以外の債権を回収する方法は以下になります。
- 債権譲渡の手続を行う。
- 債権と債務との相殺を行う。
- 代物弁済の手続を行う。
それでは、これらの方法について一つ一つ詳しく見ていきます。
一般的な債権回収を求める方法
一般的な債権回収求める方法は、金銭債権を対象とした債務者と直接交渉することによる回収方法です。
基本的には、法的手段に訴える前に行われる方法になります。
電話やメールや訪問をして催促する
まず一番始めに簡単にできることとして、電話やメールや訪問をして話し合いや督促を行います。
電話やメールや訪問で行うことは、債権者と債務者の間で話し合いによる解決を図り具体的な支払方法を決めることです。
この時に相手方の話をよく聞いて、言い分を確かめることが重要になります。
なぜなら、言い分を聞くことにより手持ちのお金がなくて払うことができないのか、商取引をした商品や行われた工事などに不満があるのかによって対応が変わってくるからです。
電話やメールや訪問をして督促する場合に大切なことは、粘り強く話し合いを行うことです。
相手方の言い分を確かめ粘り強く話し合いを行うことで、より早い解決を図ることができます。
また、特に時間や費用をかけたくない場合や相手が個人の場合には、電話による支払いの督促を行うと良いでしょう。
電話による督促のポイントとして、何回もかけるよりも確実に相手方と話ができることが大切です。
どうしても繋がらなくて話ができない場合は、要件を留守番電話に残しておくと良いでしょう。
また、本人に督促する前に、債務者の周りにいる人たちへ電話するという方法もあります。
当然、債務をかかえてるということを周りにいる人たちに知られたくないため、精神的なプレッシャーがかかり解決を早める可能性があるのです。
債権者が電話やメールや訪問をして催促しても債権を回収できない場合は、弁護士が債務者に電話や訪問をして催促してもらう方法もあります。
債権者が督促するよりも、プロである弁護士が電話や訪問をすることにより債務者の反応が変わる場合があるのです。
弁護士による督促は債権者の本気度がより伝わるため、債権者が支払わざるを得ないと思う可能性が高くなります。
内容証明郵便による催告書を送る
電話やメールや訪問をして催促を行っても債務者が応じない場合に、催告書を郵送する方法があります。
この催告書は内容証明郵便を介して郵送するのが一般的ですが、初めはお手紙という形の催告書を内容証明郵便以外の形で郵送することがおすすめです。
なぜなら、いきなり内容証明郵便で郵送することは相手方を触発させる危険性があるため、あくまでも下手にでる方が良いからです。
また、いつまでに支払うことができるかを回答期限を設けることと共に、相手方の財産の状況も聞きながら分割や返済期間などの相談にも乗ることができることを記載するのも良いでしょう。
催告書を内容証明郵便以外で郵送する場合には、郵送した記録を残すため特定記録郵便や書留郵便を利用することが大切です。
内容証明以外の催告書を郵送しても応じない場合は、内容証明郵便を介して催告書を郵送します。
内容証明郵便とは、郵便物の内容文書についての内容と誰から誰宛てに送付したのかを日本郵便が証明する書類です。
一般的に配達証明をいっしょに付けることにより、相手方に郵便が届いた日時も記録されます。
内容証明での催告書の効力は、催告が実際に行われた事実が公的に証明されることです。
また、内容証明郵便での催告書は到達の日から6ヶ月以内に裁判上の請求を行うことで、すでに進んでいる債権の時効を中断することができます。
そして、後日裁判などの法的手段に進展した場合は、有力な証拠とすることが可能です。
さらに、内容証明郵便で催告書を送付することで、相手方は訴訟も辞さないのではという心理的なプレッシャーにより軟化に転じ支払いや期日の交渉をしてくる可能性もあります。
内容証明郵便による催告書を郵送する場合により効果を発揮するためには、債権者名義でなく弁護士名で郵送することです。
弁護士名で送付することにより、債権回収と裁判を起こそうとしている本気度が確認できますのでより相手方にプレッシャーをかけることができます。
特に、債権回収が難しい債務者は、このようなトラブルに慣れている可能性があります。
そして、弁護士が法的措置による債権の強制的回収を行うと遅延損害金も請求され不利益になることも知っているため、早期の回収に応じる可能性も高くなります。
そのため、内容証明郵便による催告書の相談は、債権回収に強い弁護士に相談すると良いでしょう。
内容証明郵便の規定
内容証明郵便は、以下の規定が決められています。
内容証明に記載する文字数
縦書きの場合は、1行20文字以内、1枚26行以内です。
横書きの場合は、1行13文字以内、1枚40行以内または1行26字以内1枚20行以内です。
文字数には、句読点、括弧なども含まれます。
用紙のサイズと種類
内容証明郵便に使用する用紙の種類や大きさは自由です。
但し、相手方への送付用と郵便局の保管用と自分用の3通が必要で、用紙は3通共に統一させる必要があります。
内容証明郵便を出せる郵便局
地方郵政局長が指定した集配郵便局
事前に用意するもの
印鑑、相手方への送付用と郵便局の保管用と自分用の3通の書面、封筒
封筒の表面は郵送先の氏名と住所を記載し、裏面には自分の氏名と住所を記載
郵送にかかる費用
郵便料の他に、書留料の430円、内容証明料の430円(2枚目以降1枚260円)、配達証明料の310円がかかります。
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法的手段で債権回収する方法
内容証明郵便を郵送しても債権回収ができなかった場合には、法的手段により回収するしかありません。
以下は法的手段で債権を回収する方法になります。
民事調停の手続を行う
電話やメールや内容証明郵便での債権回収の催促がうまくいかなかった場合、いきなり訴訟を行う前に一段階ハードルが低い民事調停の手続きを行う方法があります。
民事調停とは訴訟と同様に裁判所を利用する紛争の解決方法で、当事者同士の合意によって紛争の解決を図ることを目的とした裁判外紛争解決手続です。
すなわち、裁判所が指定した裁判官1名と調停委員2名以上で構成される調停委員会の仲介の元に、債権者と債務者が裁判所に出頭し話し合いを行います。
そして、お互いが譲り合って合意を得ることで、民事調停が成立するのです。
民事調停の成立による合意は訴訟の判決と同じ効力を持ちますので、必ずしも法律にしばられないで円満な解決が図れます。
一方、話し合いによる双方の合意を得ることができなければ調停が不成立になりますので、訴訟問題に慣れている債務者はあえて裁判所に出頭しないこともあります。
民事調停は裁判所を利用する法的手続きの中では時間や費用がかからないため着手しやすいのが長所ですが、あくまでも話し合いでの合意が必要なため法的拘束力が弱いのが短所です。
債務者側に裁判所に出頭をさせて民事調停を成立させるためには、弁護士に依頼をして調停を申し立てるのが良いかもしれません。
なぜなら、「民事調停が成立しなければ次は訴訟になる。」というプレッシャーをかけさせることができる可能性があるからです。
仮差押えの申立てを行う
債権回収の訴訟を起こしたとしても債権回収を命じてもらえる判決がでるまでに、約6ヵ月から2年程度かかる可能性があります。
債務者は敗訴することを考えて、判決がでるまでの間に財産を隠してしまうかもしれません。
このような財産隠しを防ぐために、訴訟の判決がでる前に予め債務者の財産を確保しておく手続きのことを仮差押えといいます。
つまり仮差押えの申立てを行うことで、裁判所が必要を審査して仮差押え命令が出されると債務者の財産の処分は禁止されるのです。
そのため、「債権者が裁判に勝訴をしても債務者が財産を隠したり処分をしたために強制執行ができない。」ということを防ぐことができます。
仮差押えは債務者の財産の処分を禁止するものであって、それだけで債権回収ができるわけではありません。
債権回収ができるためには、改めて裁判に勝訴する必要があります。
しかし、仮差押えが認められることにより、債務者にとって以下のようなプレッシャーがかかり未回収の債権の支払いを行うことがあります。
- 仮差押えが認められたということは、訴訟になった場合に不利になること。
- 預貯金などの処分が禁止されることにより、通常の業務に支障がでること。
このように、仮差押えの申立てを行うことは、債権回収への近道になるため大変有効な手段なのです。
仮差押えの申立てを行うには、基本的に債務者の住所や本店所在場所がある地方裁判所に申立書を提出する必要があります。
申立書には、どのような債権を保有しているかがわかるように「保全すべき権利」と仮差押えの申立ての理由である「保全の必要性」を記載します。
仮差押えの申立てが行われた場合に裁判官が審査をしますが、裁判官と債権者の債権者面接が行われる可能性もあるのです。
債権者面接では「保全すべき権利」と「保全の必要性」が話し合われますが、最も重要なのは仮差押えを認める場合に担保金の金額や支払期日を定める担保決定です。
仮差押えが認められる場合、債権者は債権額の20%~30%程度の担保金を支払わなければなりません。
なぜなら、仮差押えが認められた後に訴訟で債権がないと判断された時は、本来なら自由に処分できるはずの財産が処分できないので債務者が損害を負う可能性があります。
その時の担保として、債権者は担保金を支払う必要があります。また、仮差押えの申立てに一定の歯止めをかけるため、債権者はそれなりに高額の担保金を支払う必要があるのです。
支払督促の申立てを行う
債権回収を行うための法的手続きの一つに、支払督促という手続きがあります。
支払督促とは、裁判所に対して申立てを行うことで裁判所から債務者に対し支払督促を出してもらう手続きのことです。
支払督促の対象は金銭貸借に限られ、郵送で申立てを行うことができます。
訴訟と異なりわざわざ裁判所に出向く必要がなく書面審査のみで判断されるため、提出書類に不備がない場合は支払督促が債務者に送達されるのです。
このように、支払督促のメリットは手続が簡単で短期間で完了することと、裁判所に支払う費用が訴訟の約半分で済むことです。
支払督促を受領した債務者は、異議がある場合は2週間以内に異議申立てを行うことができます。
異議申し立てが行われた場合は支払督促は効力を失い、通常の民事訴訟の手続きへ移行することになるのです。
訴訟に移行した場合に支払督促の申立てにかかった費用は民事訴訟の費用の一部として充当できますが、時間や費用や労力が余計にかかってしまいます。
即ち、支払督促の申立てを行っても債務者が異議を申立てた場合は、支払督促は無効になりますのでまったく意味がなくなります。
このことが、支払督促の最大のデメリットになります。
また、支払督促は債務者の住所地を管轄する裁判所に対して申し立てを行う必要があるため、訴訟に移行した場合も債務者の住所地を管轄する裁判所で行うこともデメリットです。
一方、債務者が支払督促を受領した後に異議申立てを行わず2週間たっても支払いがない場合は、債権者は30日以内に仮執行宣言の申立てを行うことができます。
債務者が仮執行宣言付支払督促を受領した後に異議申立てを行わず2週間たっても支払いがない場合は、強制執行を行うことができるのです。
訴訟の提起を起こす
債権回収を図るための最終的な法的手段は、訴訟(裁判)の提起を起こすことです。
訴訟を起こすことは債権回収の法的手段の中で一番確実な回収方法ではありますが、時間や費用や労力が一番かかります。
債権回収に関わる訴訟は、少額訴訟、手形小切手訴訟、通常訴訟の3種類があり、ここでは一つ一つの特徴について解説していきます。
少額訴訟
少額訴訟とは、回収したい債権額が60万円以下の金銭を請求したい人のための訴訟です。
原則として、その日のうちの一回の審理で判決がおりる簡易で迅速な訴訟になります。
費用も通常訴訟に比べて安くすみますので、少額の請求を行いたい場合にはおすすめの訴訟方法です。
少額訴訟であっても勝訴判決がでた場合は仮執行宣言が付けられるため、債権者は債務者に対しての強制執行が可能になります。
しかし、債権回収に関する少額訴訟を行うためには、金額以外の条件があります。
以下の条件をすべて満たした場合、少額訴訟の提起を起こすことができます。
- 少額訴訟を起こす回数が年に10回未満であること
- 債務者も少額訴訟の同意をしていること
- 原則債務者の住所地を管轄する簡易裁判所で行われるため、債務者の住所が明確であること
また、少額訴訟は簡易にできる訴訟のため、弁護士に依頼をしないで債権者自らが行えば以下の裁判費用のみで提起が起こせます。
請求する金額 | 手数料 |
10万円以下 | 1,000円 |
20万円以下 | 2,000円 |
30万円以下 | 3,000円 |
40万円以下 | 4,000円 |
50万円以下 | 5,000円 |
60万円以下 | 6,000円 |
手形小切手訴訟
手形小切手訴訟とは債務者が発行した不渡りになった手形や小切手を債権者が保有している場合、その手形や小切手による支払いの請求という目的の基に提起できる訴訟です。
手形小切手訴訟も少額訴訟と同様に原則として一回の審理で判決がおりるため、簡易で迅速な訴訟になります。
また、少額訴訟と同様に判決に仮執行宣言が付与されるため、債権者は債務者に対しての強制執行が可能になります。
通常訴訟
債権回収における法的手続きの中で、最も強力で回収の確実性が高いのが通常訴訟を起こすことです。
もちろんその分費用や時間がかかりますし、自分で訴訟を起こすことが難しいため弁護士に依頼することがほとんどです。
そのため、弁護士に依頼するための費用もかかります。
また、訴訟の内容にもよりますが、場合によっては1年以上の長い時間がかかることも珍しくありません。
しかし、民事調停や支払督促や少額訴訟などの他の法的手段と比べても、一番確実に債権を回収できる方法が通常訴訟なのです。
債権回収における訴訟を行うと決心した場合、以下の手順にて手続きを行います。
- 訴状の作成
訴訟を起こすためには、訴状が必要です。専門家である弁護士と相談しながら作成すると良いでしょう。
- 証拠の準備
申請書の添付書類として必要なため、契約書や借用書や領収書などの証拠を準備をします。
債務者の捺印や署名が書かれている書類は、証拠としては有力です。
しかし、提出する証拠には規定がないため、捺印や日付が無い書類であってもすべて準備しましょう。
また、証拠として提出する書類には、それぞれ正本と副本が必要です。
- 管轄する裁判所へ訴状の提出
訴訟を起こすためには、訴状、当事者目録、証拠書類、資格証明書、委任状などの申請書を管轄する裁判所へ提出します。
その中でも訴状は、裁判所の提出用としての正本、被告の人数分の副本が必要です。
管轄する裁判所とは訴訟の内容次第で裁判所の種類が決定される事物管轄と、訴訟を行う裁判所の地域により決定される土地管轄の二面から考えられます。
債権回収の場合の事物管轄は140万円以上の場合は地方裁判所が管轄で、訴訟額が140万円未満の場合は簡易裁判所が管轄です。
一方、土地管轄は通常債務者の住所を管轄する裁判所になりますが、債権者の住所を管轄とする裁判所を指定することも可能です。
- 裁判の期日
申請書が裁判所に正式に受理された場合、裁判の期日を知らせるための通知が原告である債権者と被告である債務者の双方に郵送されます。
- 法廷での審理
法定での審理が始まる前の証拠調べの段階で債権者の勝訴がある程度はっきりしている場合、裁判所から債務者へ和解を勧められることがあります。
そして、債務者が裁判を避けることの意思表示をした場合は、和解の期日が設けられます。
和解の期日には債権者と債務者のそれぞれの意見が聴取され、和解が成立した場合には債務者の今後の弁済方法が記載された和解調書が書記官によって作成されます。
仮に債務者が和解調書の内容に従わなかった場合は、債権者は強制執行を申立てることができます。
特に和解が行われない場合は、法定での審理が始まります。
法定での審理は、何回行えば判決が確定するという決まりはありません。
裁判所が十分と判断した場合は、終結の宣言が行われます。
- 判決
判決は言い渡されてから14日後に確定します。判決に納得できない場合は、確定する前に控訴をすることができます。
債権者の勝訴の判決が確定した場合は、そのことを根拠に強制執行を行うことができるようになります。
- 強制執行手続を行う
強制執行は国が強制的に債権の回収を実現してくれる制度ですが、実行するためには債務名義や執行文などの条件が揃っていなければなりません。
債務名義とは、債権の存在や範囲を公的に証明した文書のことをいいます。
確定判決、和解調書、調停調書などにより債務名義を取得した場合であっても、債務者が任意の支払いに応じないことがあります。
これらのケースでは、裁判所を介し債務者に対し強制執行を行うことにより債権を回収することができるのです。
即ち、債権者が裁判に勝訴したからといって、強制執行という法的手続きを通さずにいきなり債務者の財産を差し押さえることはできません。
ましては債権者が債務者の財産を、無断で処分をした場合は犯罪行為になります。
強制執行は、差し押さえる財産の違いによって債権執行、不動産執行、動産執行の3つに分かれます。
債権執行とは、債務者が所有している売掛金債権や貸付金債権、個人の場合は給与債権や預金債権などの債権を差し押さえるための手続きです。
即ち、債権執行が行われた後は、債権者は債務者に変わって第三債務者(給与債権の場合は雇い主、預金債権の場合は銀行など)から弁済を受ける仕組みになります。
また、土地や建物などの不動産を差し押さえるのが不動産執行で、骨董品や貴金属などの動産を差し押さえるのが動産執行になります。
その他の債権を回収する方法
今まで見てきた一般的な債権を回収する方法や、法的手段で債権回収する方法以外にも債権を回収する方法があります。
以下のような回収方法を利用すれば、資金繰りが悪い会社や倒産してしまった会社に対して未回収の債権があったとしても回収できる可能性もあります。
債権譲渡の手続を行う
未回収の債権は回収できれば一番良いのですが、回収できない場合でもキャッシュフローが改善できれば目的を達したことになります。
この目的を達するための手続きに、債権譲渡という方法があります。
債権譲渡には2つの方法があり、1つ目は債権者が債権を他人に売り渡すことです。
この方法は、未回収の債権を保有している債権者がその債権を第三者に売り渡すことにより結果的に債権の回収ができる仕組みになっています。
但し、未回収の債権を売ることになるため、実際の債権額よりも下回る金額でないとなかなか売れないことがデメリットです。
もう1つの方法は、債務者が保有している第三者に対する債権を債権者が譲り受けることになります。
即ち、弁済能力のない債務者から、債務者が保有している他の債権を譲渡してもらうことにより債権回収が図れるという仕組みです。
この方法により債務者から第三者に対する債権を譲り受けた債権者は、直接第三者に弁済を受けることができます。
債権と債務との相殺を行う。
債権者が債務者に対する債権を保有しているのと同様に、債務者も債権者に対する債権を保有している場合があります。
このような時に、どちらかの債権額の低い方を上限としてそれぞれの債権を消滅させることを相殺といいます。
例えば、A社がB社に対して300万円の債権を保有していて、B社がA社に対して100万円の債権を保有していたとします。
この場合、低い方の債権額である100万円を相殺することにより、A社がB社に対して保有する債権は200万円になりB社のA社に対する債権は消滅するのです。
相殺は相手方の同意が必要ないため、キャッシュフローを改善したい債権者にとって簡易な決済手段として利用できます。
代物弁済の手続を行う。
債務者が債務の弁済ができない場合などに、債務者の資産などを債権者に譲り渡すことで債務の支払いとする手続きのことをいいます。
資金繰りが悪い会社や倒産してしまった会社などから、債務の回収をする場合に良く利用される方法です。
但し、代物弁済による債権回収は、キャッシュフローを改善するという目的からは少々はずれた回収方法になります。
代物弁済での債権回収が行われるためには、債務者の同意が必要になります。
また、代物弁済の対象になる資産は不動産であることが多いですが、動産や債権も代物弁済の対象になる資産として認められています。
代物弁済により債権回収を行うためには、いくつか気を付けなければならない事項がありますので注意が必要です。
まず1つ目の注意点は、譲渡対象になる資産の資産価値が債権額に満たない場合であっても譲渡された時点で弁済が完了されたことになることです。
一方、譲渡対象になる資産価値が債権額よりも大きく超過する場合は、債務者は債権者に対して不当利得返還請求を行うことができます。
このようなケースを避けるためにも、債権者は譲受する資産の資産価格を事前に評価しておくべきです。
2つ目の注意点は、譲渡対象になる資産が不動産の場合に抵当権などの担保設定がされていないかの確認が必要です。
抵当権が付いている資産を譲渡された場合、抵当権が実行されると売却代金を得る優先順位は抵当権者の方が優先されるため債権者には一円も入ってこない可能性もあります。
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まとめ
このように、未回収の債権を回収する方法には、交渉により回収する方法から法的手段により回収する方法までいろいろあります。
どのような方法で回収すれば良いのか迷った時は、債権回収のプロである弁護士に相談してみるのも良いでしょう。