控訴審とは、第一審の判決に納得できないときに高等裁判所に控訴して行われる審理のことです。第一審の次に行われるため第二審とも呼ばれています。
控訴審は控訴期間や書類の提出期限など期日を決められているものがあるため、流れや特徴はきちんと理解しておくべきです。
そこで今回は、控訴審の流れや特徴、判決の種類を詳しく解説していきます。この記事では、主に民事訴訟の控訴審について解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
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控訴審とは?
控訴審とは、第一審裁判所の判決に納得できない当事者が上級裁判所に対して控訴をしたときに行われる審理のことです。三審制の第二審と同じ意味で使われます。
三審制とは、公平な裁判を実現するための制度で、「第一審」「第二審」「第三審」の原則3回まで審理を受けられます。
第一審は地方裁判所や簡易裁判所で行われるのに対して、控訴審(第二審)が行われるのは高等裁判所です。
第一審は1人の裁判官だけで審理することが多くなっていますが、控訴審は必ず裁判官3人の合議体で審理します。
控訴と上告の違い
上告とは、控訴審の判決に不服のある当事者が、さらに上級の裁判所に上告審を行うように訴えることです。
控訴や上告は判決が下された日の翌日から14日以内に行わなければなりません。14日を過ぎてしまうと判決内容が確定してしまうため注意が必要です。
控訴をする権利がある人
控訴をする権利があるのは民事訴訟の場合、当事者と法定代理人です。控訴は控訴状を提出する必要があり、そのときに当事者か法定代理人の名前を記載しなければなりません。
また、控訴は被告に与えられた権利のため、犯罪の被害者は控訴することはできません。
控訴審の流れ
民事訴訟における控訴審の流れは主に以下の5つです。
- 控訴の申立て
- 控訴理由書の提出
- 控訴答弁書の提出
- 控訴審の判決
それぞれ詳しく解説していきます。
控訴の申立て
控訴の申立ては、第一審の判決を受けた日から14日以内に行わなければなりません。この14日間のことを控訴期間と言います。
控訴の申立てをするときは、第一審裁判所に「控訴状」の提出が必要です。提出から1ヶ月程度で第一審裁判所から第二審裁判所へ事件の記録が送られます。
控訴状は「第一審の判決に不服」ということが記載されていれば良いため、内容は簡単なものになっています。
控訴期間を過ぎると判決が確定されるため、期日には注意しておきましょう。
控訴理由書の提出
控訴の申立てが完了したら、第二審裁判所から「控訴理由書」の提出を求められます。民事事件のときは控訴理由書、刑事事件のときは控訴趣意書です。
控訴理由書の内容は、第一審の判決に対して不服な点や控訴をする理由などを記載します。
控訴理由書の提出期限は、控訴の日の翌日から50日以内と定められています。ただし、提出期限を過ぎたからといって控訴が却下されるというわけではありません。
提出期限の延長はできませんが、よほどの遅延がない限り問題ないと言えます。それでも規定で50日と定められているため、期日は守っておいた方が良いでしょう。
また、控訴理由書は控訴審の判決に大きく影響するため、内容が非常に重要です。専門知識が必要になるため、基本的に弁護士に依頼して作成してもらいます。
控訴答弁書の提出
控訴された側の被控訴人は、控訴理由書に対する反論や答弁を記載した控訴答弁書を提出します。
提出期限は定められていないため、裁判所が指定した期日に従いましょう。
控訴審の判決
控訴が認められれば控訴審が行われます。控訴審の内容は、主に以下の通りです。
- 控訴理由書の内容について弁論
- 相手方の弁論
- 事実の取り調べ
これらの内容をもとに判決が下されます。
この判決にも不服だった場合は上告の申立てを行いましょう。
控訴審の特徴
控訴審の特徴は主に以下の2つです。
- 1回結審が多い
- 控訴審は民事事件か刑事事件で構造が異なる
分かりやすいようにそれぞれ詳しく解説していきます。
1回結審が多い
民事訴訟の場合、控訴審は1回結審が多くなっています。
第一審は数回の期日で開催されますが、控訴審の審理は、第一回期日で終了することがほとんどです。そのため、それ以降は主張する機会がありません。
実際に民事事件の場合、控訴審の約8割は1回審理で終了しています。
そのため、控訴理由書の内容は非常に重要です。控訴審の裁判所が納得できる理由を記載しましょう。
また、控訴審は和解で終結することも多くなっています。和解交渉をする場合は、第一回期日以降に和解期日を設定して協議を行います。
控訴審は民事事件か刑事事件で構造が異なる
控訴審の構造は民事事件の場合「続審制」、刑事事件の場合は「事後審制」です。
「続審制」と「事後審制」の特徴についてそれぞれ解説していきます。
続審制
続審制とは、下級審の審理を基礎としながら新たな訴訟資料の提出を認めて審理を続行することです。
控訴審の場合、第一審の審理判決を土台とした上で、引き続き審理をしていくことになります。
日本の民事訴訟では、控訴審で新たな証拠や主張を提出できることから続審制と言われています。
事後審制
事後審制とは、上級審で新しく審理を行うのではなく、下級審の判決内容の当否を審理することです。
続審制とは違い、新たな証拠となる資料の提出は認められていません。そのため、書面審査で終わることも多く、5分ほどで審理が終了することがほとんどです。
控訴審の内容は民事事件と刑事事件で異なるため、混同しないように注意しましょう。
控訴審の判決の種類
控訴審の判決の種類は以下の3つです。
- 控訴棄却決定
- 控訴棄却判決
- 破棄判決
それぞれ詳しく解説していきます。
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控訴棄却決定
控訴棄却とは、第一審の判決が正しいと判断され控訴を認めないことです。控訴審を行う前に決定されることを控訴棄却決定と言います。
控訴棄却決定がされるときは、主に以下の通りです。
- 控訴申立てに不備がある
- 控訴理由書に不備がある
控訴期間や提出期限を過ぎたときや方式が違反しているときに決定されます。
控訴棄却判決
控訴棄却判決とは、先程の控訴棄却決定とは違い、控訴審で第一審の判決が正しいと判決されることです。控訴申立てが不適切なときや控訴理由がないときに判決されます。
控訴が認められなければ、第一審の判決が確定されることになります。
破棄判決
破棄判決とは、控訴理由があると判断されて控訴を認めることです。控訴の申立てをする側はこの破棄判決を目指します。
控訴審は、破棄判決をしたときに行われる措置があります。このときに行われる措置は以下の3つのうちいずれかです。
- 自判
- 差戻し
- 移送
それぞれの特徴を解説していきます。
自判
自判は控訴裁判所が審理することです。ただし、第一審で破棄されなかった部分に関しては審理せず、破棄された部分に対して審理することになります。
そのため、最初からやり直すというわけではありません。
差戻し
差戻しは第一審裁判所に審理をやり直させることです。
移送
移送は第一審裁判所と同等の裁判所に改めて審理させることです。
控訴審における不利益変更禁止の原則
不利益変更禁止の原則とは、被告が控訴したときに第一審の判決を不利益に変更することができないことです。
控訴は裁判を公平にするための制度となっているため、被告人が不利益を回避するために設けられています。
そのため、被告は控訴を認められなかったとしても原判決以上に不利益な判決を受けることはありません。
控訴審の目標
控訴審の目標は、第一審の判決を破棄してもらうことです。第一審判決を破棄するケースは2つで「1項破棄」と「2項破棄」があります。
この2つについて詳しく解説していきます。
1項破棄になるケース
1項破棄とは、控訴理由に当たる事由があるときに第一審を破棄することです。第一審の判決に対して事実を争うときは1項破棄しかありません。
そのため、控訴審では基本的に1項破棄を目指していくことになります。
2項破棄になるケース
2項破棄とは、控訴理由に当たる事由はないが、第一審判決後に新たな事実が発生したときに破棄することです。
新たな事実が発生して取り調べた結果、第一審判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認められる場合に2項破棄になります。
例として、第一審判決後に示談が成立したことや被告人に有利な事情が生じたことなどが挙げられます。
控訴審の弁護活動
控訴審をする時の弁護活動は、主に以下の通りです。
- 控訴理由書を作成する
- 破棄判決を目指す
それぞれ詳しく解説していきます。
控訴理由書を作成する
控訴審は書面での審理が中心になっているため、控訴理由書の内容が非常に重要です。この内容次第で控訴審の結果が決まると言っても過言ではありません。
説得力のある内容を書くためにも専門知識や経験のある弁護士の力が必要となってくるでしょう。
破棄判決を目指す
第一審の判決に対し、新たな証拠を探したり、分析したりして破棄判決を目指すための弁護活動をします。
また、2項破棄を目標とするときは示談の成立させるための活動をすることもあります。
新たな証拠や不合理な部分が明らかになったときに具体的な主張をすることも弁護士の重要な活動です。
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まとめ
控訴審とは、第一審の判決に不満があり、控訴したときに行われる審理のことです。
控訴期間や控訴状の提出期限など期日をすぎると判決が確定されるものもあるため、スケジュールや期日には注意しておきましょう。
控訴審の判決は控訴理由書の内容でほぼ決まるため、基本的に控訴理由書の作成は知識や実績のある弁護士に依頼します。
控訴をして破棄判決を実現するためにも、控訴審の流れや特徴を理解しておきましょう。