民事裁判は、判決や和解によって紛争を解決へと導く手続きです。和解が裁判途中で成立した場合は、その時点で訴訟手続は終了となり、紛争の解決が主眼に置かれている制度といえます。
こちらの記事では、特に民事裁判を起こす際にかかる費用について、また弁護士依頼費用、そしてそもそも民事裁判とはどのようなものか、民事裁判の裁判費用の内訳などについて詳しく説明しています。
民事裁判を考えられている方はぜひ参考になさってください。
民事裁判とは?
それでは、そもそも民事裁判とはどのようなものをいうのでしょうか。
民事裁判とは、人と人との間、つまり個人や法人などの私人間で起こったトラブルを解決するための裁判手続をいいます。
まず、裁判は民事裁判と刑事裁判に大きく分かれ、1つの事件について原則3回まで裁判を受けることができます。
刑事裁判とは刑事事件に対応する裁判であり、検察官が起訴して裁判を起こします。この場合、検察官と、犯罪を行ったとして起訴された被告人が当事者となります。
民事裁判は刑事裁判と違い、一般の人(法人を含む)同士が当事者となります。裁判所に訴えを提起した側の当事者を「原告」、提起された側の当事者を「被告」といいます。
民事裁判は当事者同士で決着がつかないことに対して、裁判所が法律を根拠に判断をする手続ともいえます。
また、刑事事件とは違い、民事裁判は当事者同士が納得すれば解決となるため、裁判途中で和解する場合もあります。和解した場合、裁判はそのタイミングで終わり、判決は出ません。
民事裁判を起こす際には、裁判所手数料(訴訟印紙代)が費用として必要になります。
加えて、必ずしも裁判でなければ決着がつかないということもなく、『民事調停』という制度もあります。民事調停を利用する場合も、裁判所手数料(訴訟印紙代)はかかってきます。
民事調停とは?
民事調停は、通常、簡易裁判所で行われ、解決までにかかる期間も裁判より短く、手数料なども裁判と比較すると低く設定されており、気軽に利用しやすい制度です。
簡易裁判所の窓口に備え付けの申立用紙に記入して簡単に申立てすることが可能です。
また、民事調停は裁判のようにはっきりと勝ち負けを決めるのではなく、主に話合いで合意形成をすることで紛争の解決を図ります。
調停手続では、裁判官と共に、一般の市民から選ばれた調停委員も参加します。
手続の流れは以下の通りです。
申立て→調停期日の指定→当事者双方の呼出し→調停期日→話合い→調停成立
話合いを行ってもどうしても折り合いがつかない場合は、調停に代わる決定を裁判所がするか、もしくは調停不成立となります。
民事裁判の流れ
民事裁判は以下のような流れで進みます。
- 原告(訴えを起こす)側
訴状提出→答弁書受領→証拠書類、証人の準備→審理(裁判)→和解または判決
- 被告(訴えを起こされた)側
訴状・期日呼出状受領→答弁書提出→証拠書類・証人の準備→審理(裁判)→和解または判決
裁判所は、原告と被告の間に入り、原告から訴状を受付けて審査し、審理期日を指定して、訴状・期日呼出状を被告へと送達します。答弁書も、裁判所を経由して被告から原告へ渡ります。
審理(裁判)においては、原告・被告は自身の主張を証拠とともに提出し、裁判所は争点を整理して、提出された証拠書類や証人などの取調べを行い、和解がない場合は判決を出してトラブルを解決へ導きます。
民事裁判でかかる費用とは
民事裁判を起こす際には、訴訟費用と弁護士費用の2種類の費用が発生します。
訴訟費用は裁判を起こす際には必ず発生し、まずは訴えを起こす側である原告側が負担することになります。
訴訟費用の内容は、裁判所手数料(訴訟印紙代)、郵便切手代(訴訟郵券代)、証人を呼んだ場合は旅費・日当なども含まれ、これらは民事訴訟費用等に関する法律で定められています。
裁判所手数料(訴訟印紙代)は事件ごとに金額が変動しますが、基本的には訴訟の目的価額により増額されます。
例として、100万円までは、10万円ごとに1,000円上がり、500万円までは20万円ごとに1,000円上がります。
裁判所手数料は、収入印紙で、訴状や申立書に貼付して納付します。ただし、手数料の額が100万円を超える場合は、収入印紙に代えて現金で納付することもできます。この場合、納付先は日本銀行の本店、支店、代理店などに限られます。
郵便切手代(訴訟郵券代)は、裁判所から原告・被告に訴状などを郵送する際に必要となり、こちらも当事者が金額を負担します。郵便切手代は利用する裁判所によって金額や内訳が異なります。
また、裁判において、証人を呼ぶ場合は、証人が裁判に出廷するためにかかった旅費・日当を負担する必要があります。
通常訴訟の場合は、控訴や上告する場合も考えられます。この場合もそれぞれ訴訟費用がかかります。
上記の訴訟費用に加えて、弁護士に代理人を依頼する場合、弁護士費用も必要になります。
弁護士費用は事件・事務所により異なり、民事裁判が成功した(勝訴した)場合は成功報酬が必要になります。
弁護士費用は弁護士に委任した場合、弁護士に支払う費用をいいます。弁護士費用は依頼する弁護士、また依頼する事件により変わります。裁判に成功した場合(勝訴した場合)、成功報酬がかかってくる場合があります。
訴訟費用の具体的な金額については次のトピックにてまとめてありますので、そちらを参考になさってください。
民事裁判の訴訟費用の中身
- 裁判所手数料(訴訟印紙代)
- 郵便切手代(訴訟郵券代)
- (証人を呼んだ場合)旅費・日当
裁判手数料は起こす裁判の種類により異なり、区分として、訴えの提起、支払督促の申立て、借地非訟事件の申立て、労働審判手続の申立て、控訴の提起、上告の提起があります。
借地非訟事件とは、借地契約のうち旧借地法及び借地借家法に定められた借地権を扱う民事裁判です。紛争の対象である契約が、建物の所有を目的とする土地賃貸借契約、または地上権設定契約である必要があります。
一般的な民事裁判の場合、訴えの提起の区分に入ります。
手数料は訴額により異なり、また、訴額が上がれば比例して裁判所手数料の額も上がります。上がり幅は、訴額10万円まで〜100万円、120万〜500万円、550万円〜1,000万円、1,100万円〜の範囲ごとに、それぞれの区分に応じた増加額が設定されています。訴えの提起の場合ですと、それぞれの範囲に対し、1,000円ずつ、1,000円ずつ、2,000円ずつ、3,000円ずつ、手数料は増額します。
それぞれについて、具体的な金額、内容を解説します。
裁判所手数料(訴訟印紙代)
- 訴えの提起
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 1,000円 |
20万円 | 2,000円 |
30万円 | 3,000円 |
100万円 | 10,000円 |
120万円 | 11,000円 |
300万円 | 20,000円 |
500万円 | 30,000円 |
550万円 | 32,000円 |
1,000万円 | 50,000円 |
1,100万円 | 53,000円 |
1,200万円 | 56,000円 |
1,500万円 | 65,000円 |
2,000万円 | 80,000円 |
5,000万円 | 170,000円 |
1億円 | 320,000円 |
- 支払督促の申立て
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 500円 |
20万円 | 1,000円 |
30万円 | 1,500円 |
100万円 | 5,000円 |
120万円 | 5,500円 |
300万円 | 10,000円 |
500万円 | 15,000円 |
550万円 | 16,000円 |
1,000万円 | 25,000円 |
1,100万円 | 26,500円 |
1,200万円 | 28,000円 |
1,500万円 | 32,500円 |
2,000万円 | 40,000円 |
5,000万円 | 85,000円 |
1億円 | 160,000円 |
- 借地非訟事件の申立て
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 400円 |
20万円 | 800円 |
30万円 | 1,200円 |
100万円 | 4,000円 |
120万円 | 4,400円 |
300万円 | 8,000円 |
500万円 | 12,000円 |
550万円 | 12,800円 |
1,000万円 | 20,000円 |
1,100万円 | 21,200円 |
1,200万円 | 22,400円 |
1,500万円 | 26,000円 |
2,000万円 | 32,000円 |
5,000万円 | 68,000円 |
1億円 | 128,000円 |
- 労働審判手続の申立て
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 500円 |
20万円 | 1,000円 |
30万円 | 1,500円 |
100万円 | 5,000円 |
120万円 | 5,500円 |
300万円 | 10,000円 |
500万円 | 15,000円 |
550万円 | 16,000円 |
1,000万円 | 25,000円 |
1,100万円 | 26,500円 |
1,200万円 | 28,000円 |
1,500万円 | 32,500円 |
2,000万円 | 40,000円 |
5,000万円 | 85,000円 |
1億円 | 160,000円 |
また、通常訴訟ですと、第一審での判決が不服であれば控訴することができ、二審の判決についても不服がある場合は上告することができます。原則、控訴審は高等裁判所、上告審は最高裁判所ですが、第一審の裁判所が簡易裁判所の場合は高等裁判所が審理を行います。
控訴の提起・上告の提起にも裁判所手数料(訴訟印紙代)はかかります。
- 控訴の提起
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 1,500円 |
20万円 | 3,000円 |
30万円 | 4,500円 |
100万円 | 15,000円 |
120万円 | 16,500円 |
300万円 | 30,000円 |
500万円 | 45,000円 |
550万円 | 48,000円 |
1,000万円 | 75,000円 |
1,100万円 | 79,500円 |
1,200万円 | 84,000円 |
1,500万円 | 97,500円 |
2,000万円 | 120,000円 |
5,000万円 | 255,000円 |
1億円 | 480,000円 |
- 上告の提起
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 2,000円 |
20万円 | 4,000円 |
30万円 | 6,000円 |
100万円 | 20,000円 |
120万円 | 22,000円 |
300万円 | 40,000円 |
500万円 | 60,000円 |
550万円 | 64,000円 |
1,000万円 | 100,000円 |
1,100万円 | 106,000円 |
1,200万円 | 112,000円 |
1,500万円 | 13,000円 |
2,000万円 | 160,000円 |
5,000万円 | 340,000円 |
1億円 | 640,000円 |
郵便切手代(訴訟郵券代)
郵便切手代は、裁判所から原告・被告に訴状などを郵送する際に必要になるため、こちらも金額を負担します。また、利用する裁判所によって金額が異なります。
例として、東京地方裁判所では、以下のように決められています。
【東京地方裁判所で民事裁判を起こす場合の郵便切手代】
当事者(原告・被告)が1名の場合、6,000円を負担する。当事者が1名増えるごとに、2,178円を追加する。(内訳:500円×4、84円×2、5円×2)
訴訟郵券代(郵便切手代) | 必要枚数 |
500円 | 8枚 |
100円、20円、10円、5円、2円、1円 | 10枚ずつ |
84円 | 5枚 |
50円 | 4枚 |
郵便切手代は、郵便切手そのものを納付することもできますが、現金納付、電子納付(裁判所において事前登録が必要)にも対応しています。
証人を呼んだ場合の旅費・日当
証人を呼んだ場合の旅費・日当も、民事訴訟費用等に関する法律によりその金額が定められています。証人については以下のようになります。
日当:1日あたり8,050円以内
旅費:実費(鉄道費や航空費代)
宿泊料:甲地方 8,700円以内、乙地方 7,800円以内
宿泊料の地方の区分については、政令指定都市などは甲地方、そのほかは乙地方といった違いになります。
民事調停の費用
民事裁判以外の裁判所を利用した紛争解決の手段である民事調停ですが、こちらの制度を利用する場合も裁判所手数料(訴訟印紙代)を負担する必要があります。
民事調停の費用は訴訟に比べ、裁判所手数料も安くなっています。手数料は、訴額等の金額に比例して金額が上がるよう設定されています。
具体的には、訴額等が10万円までの場合、手数料は500円ですが、100万円まで10万ごとに手数料の金額は500円ずつ上がり、120万円から550万円までは20万円ごとに500円ずつ上がります。以降も50万円ごとに1,000円ずつなど、区分に分かれて手数料は変化します。
実際の金額の例は以下の表を参考になさってください。
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 500円 |
20万円 | 1,000円 |
30万円 | 1,500円 |
120万円 | 5,500円 |
500万円 | 15,000円 |
550万円 | 16,000円 |
1,000万円 | 25,000円 |
1,100万円 | 26,200円 |
1,200万円 | 27,400円 |
1,500万円 | 31,000円 |
2,000万円 | 37,000円 |
5,000万円 | 73,000円 |
1億円 | 133,000円 |
民事裁判の種類
民事裁判には、大きく4つの種類があります。
- 通常訴訟
個人間の法的紛争、主に財産権に関するトラブルの解決を目指す訴訟です。民事訴訟法に従って審理が行われます。
裁判にかかる費用(訴訟費用)は、訴訟印紙代(申立手数料)と訴訟郵券代(郵便切手代)の2種類ありますが、通常訴訟では、訴えの種類により手数料が異なります。訴訟印紙代(申立手数料)については民事訴訟費用等に関する法律3条・同別表第1の1項に定められています。
通常訴訟の具体的な訴訟印紙代の金額については、トピック『民事裁判でかかる費用とは』で詳しく説明しています。
- 手形小切手訴訟
民事訴訟法の特別規定によって審理される手形・小切手金の支払いを求める訴訟です。手形・小切手金の支払いを求める原告は、手形小切手訴訟か一般訴訟のどちらを提起するのか、選択することができます。
手形小切手訴訟における裁判所手数料は、請求価額(訴額)により決まり、通常訴訟での訴えの提起の場合と同様の金額となります。
請求価額(訴額)については、複数の手形・小切手を併せる場合は、原則として各請求の価額を合算した額を基準とします。
訴訟郵券代については、裁判所によって額や内訳が変動する可能性があります。
以下は東京地方裁判所の例ですので、一例として参考になさってください。
【東京地方裁判所での手形小切手訴訟における訴訟郵券代】
被告1名で,500円を8枚、84円を5枚、50円を4枚、100円、20円、10円、5円、2円、1円を10枚ずつ(合計6,000円)納める必要あり。
被告が1名増えれば、2,178円(500円を4枚,84円を2枚,5円を2枚)のセットを追加して納めなくてはならない。
訴訟郵券代(郵便切手代) | 必要枚数 |
500円 | 8枚 |
84円 | 5枚 |
50円 | 4枚 |
100円、20円、10円、5円、2円、1円 | 各10枚ずつ |
- 少額訴訟
簡易迅速な手続で60万円以下の金銭の支払いを求める訴訟です。
建物の明渡し、物の引き渡し、登記などの請求はできず、金銭の支払いのみを請求することができます。
裁判所手数料(訴訟印紙代)については以下の表を参考にしてください。
訴額等 | 手数料 |
10万円まで | 1,000円 |
20万円 | 2,000円 |
30万円 | 3,000円 |
40万円 | 4,000円 |
50万円 | 5,000円 |
60万円 | 6,000円 |
また、少額訴訟においても訴訟郵券代は必要です。
訴訟郵券代については、裁判所によって額や内訳が変動する可能性があります。
以下は東京簡易裁判所の例ですので、一例として参考になさってください。
【東京簡易裁判所での少額訴訟における訴訟郵券代】
被告1名で,500円、2円を5枚,100円、84円、50円、20円、10円、5円を10枚ずつ(合計5,200円)納める必要あり。
被告が1名増えれば、2,500円(500円、50円、10円、5円を4枚,100円、20円を2枚)のセットを追加して納めなくてはならない。
訴訟郵券代(郵便切手代) | 必要枚数 |
500円、2円 | 5枚ずつ |
100円、84円、50円、20円、10円、5円 | 10枚ずつ |
- その他
上記3類型に当てはまらない裁判もあります。
例として家族関係についての訴訟である『人事訴訟』や、行政庁の行為の取り消しを求める訴訟などを含む『行政訴訟』が挙げられます。
人事訴訟の場合の裁判所費用
人事訴訟とは、離婚や認知など、個人の法的な身分についての争いを解決する訴訟のことをいいます。人事訴訟はまず家事調停を申立て、家事調停で解決できなかった場合に人事訴訟へと進みます。
人事訴訟は訴えの内容により、裁判所手数料(訴訟印紙代)が異なります。
例として、離婚に関わる人事訴訟について、裁判所手数料を以下に挙げます。訴訟費用の合計は、これらの裁判所手数料にそれぞれの裁判所の設定する郵便切手代(訴訟郵券代)が加わった金額になります。
- 離婚のみを求める場合(親権者の指定を求める場合も含む):13,000円
- 離婚請求と附帯処分(財産分与、養育費等の子の監護に関する処分)を求める場合: 13,000円+各1200円
例:離婚請求と子2人の養育費の請求:13,000円+1,200円×2=16,600円
- 離婚請求と附帯処分に併せて慰謝料を求める場合:
例:離婚請求と子2人の養育費の請求と慰謝料300万円の請求:13,000+1,200円×2+20,000円=23,600円
(慰謝料300万円の裁判所手数料は通常訴訟の訴えの提起の手数料と同一)
行政訴訟の場合の裁判所費用
行政訴訟とは、国や地方公共団体を当事者とし、個人の権利及び利益を救済する目的がある訴訟制度をいいます。
行政訴訟は、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、帰還訴訟の4つの類型に分かれます。
行政訴訟でも訴額(訴訟物の価額)により、裁判所手数料(訴訟印紙代)は変動しますが、行政処分取消訴訟は、一律で訴額160万円と定められています。この時訴訟印紙代は13,000円かかります。
裁判所手数料(訴訟印紙代)は、通常訴訟の訴えの提起の区分と同じ額が設定されており、請求価額(訴額)に応じて手数料は変動します。郵便切手代(訴訟郵券代)についても、他の訴訟と同様に、それぞれの裁判所の設定する額を用意する必要があります。
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民事裁判でかかる弁護士費用とは
民事裁判を起こす際にスムーズな解決を目指すのであれば、弁護士への依頼はすべきだといえます。裁判は専門性の高いものになりますので、勝訴するには経験と実績のある弁護士選びが必須であるともいえるでしょう。
依頼する際には弁護士費用についても気になるところかと思います。
弁護士費用の中身について、また実際に民事系法律事務所で採用されている弁護士報酬体系についてご紹介しますので、弁護士に依頼する際の参考になさってください。
弁護士費用の中身
民事裁判には2種類の費用があり、訴訟費用と弁護士費用で構成されます。
そのうち、弁護士費用の中身は以下のように分かれます。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- 日当
(タイムチャージ)
着手金がどのタイミングで発生するのか、また報酬(成功報酬)がどういったものにかかるのかなどは、弁護士事務所や事件ごとに異なることがあります。
日当は調停や裁判に弁護士が同席・出席する場合などに発生する費用です。
タイムチャージは弁護士の作業時間に応じて発生する費用です。弁護士への報酬の計算方式は着手金・報酬金方式とタイムチャージ方式(時間制報酬方式)の2種類あり、前者の方式の場合はタイムチャージは発生しません。具体的な金額の計算としては、事件の処理に要した時間に弁護士の1時間当たりの単価を乗じて出します。
また実費として以下のような費用も発生する場合があります。
- コピー代などの事務費
- 交通費
- 通信費
これらの金額を全て足した額が弁護士費用となります。
民事裁判での弁護士費用の目安
弁護士費用は事務所によって異なる場合が多いため、具体的な金額は問い合わせするのが確実です。
こちらでは民事系法律事務所で実際に採用されている弁護士報酬体系についてご紹介します。
- 相談料:約2〜5万円/60分
- 着手金等:約60万円から170万円以上又は経済的利益額×約2%〜8%
- 訴訟の報酬金:確保した経済的利益の額×(約7%〜26%)−着手金等
割合は300万円以下の場合に約26%、300万円超3,000万円以下の場合に約17%、3,000万円超3億円以下の場合に約10%、3億円以上の場合に約7%
- 出張日当:約3万円/半日、約6万円/1日
弁護士費用の決め方
着手金・報酬金方式での費用の決め方についてご説明します。
着手金は、弁護士に事件を依頼した段階で支払うもので、着手金を支払ってから依頼した手続が進行します。
基本的には、依頼した事件で得られる経済的利益の額で区分されることが多いですが、手続の複雑さなどによって金額が異なる場合があります。
報酬金は事件を成功の状態で終わらせることができた場合に発生する費用で、こちらは事件終了の段階で支払います。
成功報酬ともいいますが、必ずしも完全な成功の場合にのみ発生するのではなく、一部成功の場合でも度合いに応じて費用が発生します。全面敗訴など不成功に終わった場合は発生しない費用となります。
民事裁判でかかった費用は相手に請求できる?
法律で定められている訴訟費用については、敗訴者が負担することになります。
これは民事訴訟法61条に「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする」と定められているためです。この条文を根拠に、勝訴した当事者は敗訴した当事者に対して訴訟費用を請求することが可能です。
訴訟費用には、訴状やその他の申立書に収入印紙を貼付して支払われる裁判所手数料のほか、書類を送るための郵便料金や裁判に呼んだ証人の旅費・日当などが含まれます。例として、弁護士が訴訟代理人として裁判所に出頭した場合は、1回当たり3,950円×出頭回数で費用が計算でき、このような費用の合計を請求することができます。(民事訴訟費用等に関する規則2条2項)
しかし、着手金や報酬金といった弁護士費用は訴訟費用には含まれません。
そのため、弁護士費用については、委任されたご本人が支払うことになります。ご自身での費用負担となりますので、依頼する弁護士事務所については吟味されることをおすすめします。
ただし、不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、加害行為と弁護士費用との間に相当因果関係が認められるような一定の場合には、敗訴した当事者に対して相当範囲内で弁護士費用の負担を求めることができる可能性があります。
民事裁判で負けた場合、費用はどうなるの?
訴訟費用は敗訴者が負担することになると前トピックにて説明しました。
つまり、民事裁判を起こして敗訴となった場合、訴訟費用は自身で負担することになります。また、弁護士費用は勝訴・敗訴の結果に関わらず、依頼したご本人が負担することになりますので、こちらについても支払いが発生します。
つまり、民事裁判を起こして敗訴した場合は、訴訟費用及び弁護士費用を原告側(訴えを起こした側)が負担することになります。
ただし、弁護士費用の内訳の中の報酬金については、敗訴の場合、判決での成功度合いに応じて費用が変わってくるため、勝訴の時より少額になる可能性が高いです。全面敗訴の場合は不成功となりますので報酬金は発生しません。
請求した内容について一部認められた場合などは一部成功となりますので、その場合は報酬金が発生することがあります。
弁護士に依頼するメリット
弁護士費用は決して安いものではありません。しかし費用を支払うだけのメリットがあります。
民事裁判で紛争解決を図る場合、勝訴のためには自身の争う分野に精通した弁護士を選ぶ必要があります。難易度の高い案件に対応できる事務所であれば、期待に応えられる可能性は高まるでしょう。
特にどのような点でメリットといえるのかについて、ご紹介します。
時間、労力、心的不安の軽減
ご自身での裁判と比較してももちろん、専門外であったり経験不足の弁護士に依頼した場合と比べても、経験・実績のある弁護士に依頼した場合、時間や労力、心的不安の軽減は、まずメリットとして挙げることができます。
裁判は専門性が特に高い公共の制度です。資格を持った専門家でなければ、難しい部分も多く、また、事案が高度・複雑な場合はますます一般の方には理解することが難しくなるでしょう。
お悩みの分野について丸ごと相談できる弁護士を見つけることができれば、事案に悩む時間、労力は確実に減ります。
また、法的手続の全体の見通しを事前に専門家から伝えてもらうことで、事案の決着についてなど将来的な事柄に関する心的不安を軽減することができるでしょう。
トラブルの相手方とも法的専門家が間に介入することで当事者同士の直接交渉を回避でき、更なるトラブルが生まれることも必然的に避けられます。
適切な手続、適切な対応で迅速な解決
専門家である弁護士であれば、適切な法的手続をスムーズに行い、状況に沿った適切な対応をすることが可能です。
裁判は上訴などで長引けば長引くほど費用はかかり、問題解決まで時間がかかってしまいます。裁判途中で和解できる可能性があれば、柔軟に対応し交渉することができる点も、専門家に頼むメリットだといえます。
また、専門性に長けた弁護士であれば、事案に対しどのような対応をすべきなのか、長期的視野でアドバイスすることができるので、結果より迅速に解決に導くことが可能です。
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まとめ
- 民事裁判費用は訴訟費用と弁護士費用の2種類がかかる
- 訴訟費用は裁判所手数料(訴訟印紙代)・郵便切手代(訴訟郵券代)で構成される
- 訴訟費用は敗訴者が負担
- 裁判所手数料(訴訟印紙代)は訴えの種類で区分され、金額が異なる
- 控訴・上告する場合はそれぞれ追加で裁判所手数料(訴訟印紙代)がかかる
- 民事裁判をする場合には弁護士に依頼した方がメリットが大きい
民事裁判でかかる費用のうち、訴訟費用は、起こす民事裁判の内容によって異なる場合があります。また、訴訟費用は訴額に比例して金額が上がります。
おおよその民事裁判は通常訴訟の訴えの提起に該当するため、金額は訴額100万円までは10万円ごとに1,000円、訴額500万円までは20マンごとに1,000円、訴額1,000万円までは50万円ごとに2,000円、訴額1,000万円を超す部分は100万円ごとに3,000円が手数料として加算されます。
民事裁判を起こすべきか悩まれている段階であっても、プロのアドバイスを受けることは早期解決への一歩となります。ぜひお気軽にご相談くださいませ。