仕組み債で発生した損失は損害賠償請求できる?スキームやリスクについて解説

昨今、耳にする機会が増えた「仕組み債」。高い利回りが魅力の金融商品で、投資を検討する方も増加の傾向です。仕組み債の販売を巡っては、さまざまな問題が発生しており、損害賠償請求をおこなうケースも増えています。

一方で仕組み債は、銀行や大手証券会社が積極的に販売しており、「勧誘を受けたことがある」という方もいるでしょう。

そこで、本記事では仕組み債の概要や基本的なスキーム、把握しておくべきリスクと現状について解説します。仕組み債の購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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仕組み債とは

仕組み債は、一般的な債券にはない特殊な「仕組み」を持つ債券です。オプションやスワップなどのデリバティブ要素を加えることで、投資家や発行者のニーズに合ったキャッシュフローを実現します。

仕組み債は満期やクーポン、償還金などを柔軟に設定でき、一般的な債券に比べて高いリターンを期待できるのが特徴です。ただし、デリバティブの影響により元本割れのリスクもあるため、商品性を理解する必要があります。

また債券投資は、お金を貸して利益を得る単純な仕組みですが、仕組み債はそこにデリバティブ要素を組み込んだ複雑な債券です。実際、利用者の中には仕組みをしっかりと理解しないまま利用したことで、多額の損失を被った利用者も少なくありません。仕組み債を購入する際は、仕組みや商品性および、リスクなどを正確に理解したうえで利用することが大切です。

オプション…将来のある時点で特定の価格で売買できる権利のこと。
スワップ…金利や通貨を交換する取引のこと。

仕組み債において理解しておくべき用語

仕組み債を理解するうえでは、関連する用語についてきちんと把握しておく必要があります。仕組み債に関連する用語には、以下のようなものが挙げられます。

用語 概要
期間・期日 満期までの期間を指す。商品によって期間が異なる。
最終償還期日 仕組み債に投資した現金が返還される日 。
参照指数 仕組み債の現状を表す指数。「日経平均株価を参照指数とする」といった形で設定される。
最終評価日 仕組み債を評価する日。参照指数の値などによって決定される。
当初指数 仕組み債の利率や早期償還などを判定する基準となるもの。仕組み債が発行された日の株価などが該当する。
早期償還 早期償還判定日に、定められた「早期償還判定水準」に参照指数が達した際、満期を待たずに償還されること。早期償還判定水準は、仕組み債ごとに定められる。
ノックイン 参照基準が「ノックイン判定水準」以下になること。ノックイン判定水準は、仕組み債ごとに「当初指数(株価)×50%」といった形で設定される。
ノックアウト 参照基準が「ノックアウト判定条件」以上に達すること。ノックイン判定水準は、仕組み債ごとに「参照指数の行使価格×120%」といった形で設定される。
デジタルクーポン 参考指数の推移によって決定される利率のこと。商品によって異なる。

とくに上記は仕組み債を知るうえで重要となる用語であるため、購入を検討する際は、きちんと理解しておきましょう。

基本的な仕組み債のスキーム

仕組み債は発行者だけでなく、アレンジャーやスワップハウスなど複数の関係者が存在する債券です。海外で発行されることも多く、日本では「外国債券」として販売されることもあります。

発行者 主に海外の金融機関。アレンジャーが調整した仕組み債を発行することで、資金調達をおこなう。
アレンジャー 仕組み債の構成を調整する。投資家のニーズに応じて、どのような仕組み債にするかを調整(アレンジ)する。
販売会社 仕組み債を消費者に販売する。アレンジャーと販売会社が一緒の場合もある。
スワップハウス デリバティブ取引をおこなう金融機関。発行者とデリバティブ取引をおこなうこともある。

仕組み債は、主に海外の金融機関などが資金調達を目的に発行する債券です。発行者にあたる海外の金融機関は、証券会社をはじめとするアレンジャーとデリバティブ要素の調整をおこない、投資家のニーズにマッチした仕組み債を発行します。発行された仕組み債は、銀行や証券会社などの販売会社を通じて消費者へ販売されます。

なお、デリバティブとは、為替や株式などから派生した金融商品のことです。仕組み債の場合、ノックイン条項やノックアウト条項などがデリバティブ要素にあたります。このデリバティブ要素が、仕組み債の構造を複雑にしている要因のひとつです。理解していないまま購入すると、思わぬ損失を被る場合があります。

仕組み債の種類

仕組み債には、多様な種類が存在しており、その特徴もさまざまです。よく利用される仕組み債としては、以下のような種類が挙げられます。

EB債(他社株転換可能債券)

EB債(他社株転換条項付社債)は、債券を発行元とは別の会社の株式に転換できる権利を持つ特殊な仕組みの債券です。基本的な仕組みはリンク債と似ていますが、ノックインが発生して満期時の時価が当初価格以下になると、現金だけでなく株式で償還されます。

またEB債(他社株転換条項付社債)は、株式に転換された後の時価によって、実質的な元本割れなどの損失が生じることも少なくありません。加えて株式を保有し続ける場合、株価の下落による損失拡大のリスクもあります。

リンク債(株価指数連動債)

リンク債(株価指数連動債)は、株価指数や株価の変動によって、償還額などが変わる仕組みの債券です。投資家の利益やリスクが株価や株価指数に連動するため、「リンク債」と呼ばれています。

リンク債は株価の変動次第で、満期で予定通りの金額を受け取れなかったり、利子が減ったりするのが特徴です。たとえば日経平均リンク債では、日経平均株価が定められた範囲内で推移すると満期償還されます。

一方で株価が予定通り上昇しなければ、下落率に応じて償還金額が計算されることになり、元本割れのリスクが生じます。基本的な仕組みはEB債と似ていますが、リンク債は金銭で償還され、EB債のように株式に転換されることはありません。

二重通貨建債

二重通貨建債は、利払いや償還において、異なる2種類の通貨を使用する債券です。「広義のデュアルカレンシー債」と同じ概念として、解釈されることもあります。二重通貨建債は、「(狭義の)デュアルカレンシー債」と「リバースデュアルカレンシー債」に分類されます。

日本を主体の側でみたとき、「払込と利払い=日本円/償還=外貨」のものがデュアルカレンシー債。「払込と利払い=外貨/償還=日本円」のものを、リバースデュアルカレンシー債と呼ぶのが一般的です。

デュアルカレンシー債は償還において為替リスクを受ける可能性があり、リバースデュアルカレンシー債は利払いのときなどに為替リスクの影響を受ける場合があります。特約条件が付与された商品もあるため、発行時には特約内容をよく確認しておきましょう。

仕組み債のリスク

仕組み債については、「仕組み債特有のリスク」と「一般的な債券投資で共通するリスク」の2つのリスクを考慮する必要があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

仕組み債特有のリスク

仕組み債は、特殊な仕組みの債券です。特有のリスクとしては、以下のようなものが考えられ、金融庁も注意喚起をおこなっています。

  • クーポンが減る場合がある
  • 償還金が減る場合がある
  • 債務不履行による損失のリスク
  • 商品性による損失のリスク

クーポンが減る場合がある

仕組み債は、受け取る利子が大きいことが魅力ですが、一部の銘柄には「デジタルクーポン」という要素があり、利率が低下する可能性がある点に注意が必要です。

デジタルクーポン債の要素が含まれた債券では、利率が参考指標の値動きに基づいて変動します。条件を満たせば高い利率が適用されますが、参考指標の価格が一定水準を下回ると低い利率が適用されてしまいます。利率が下がってしまうと、受け取る利子(クーポン)が減るので、利率の条件などは、しっかりと確認したうえで購入することが大切です。

償還金が減る場合がある

仕組み債は、参考指標の値動きに基づいて償還金額が変動し、値動き次第で元本割れのリスクがあります。

たとえばノックイン条項が設定されている場合、株価が定められたノックイン水準を下回ると、償還金が減額されます。ノックイン条項は商品によって異なりますが、当初指数からの下落幅が大きいほど、減額されるように規定されていることがほとんどです。

なお、ノックイン水準を下回ったとしても、最終価格が当初価格以上なら全額償還されます。

債務不履行による損失のリスク

仕組み債は債券にデリバティブが含まれている性質上、複数の関係者が取引に関与しています。債券の発行だけでなく、ほかの関係者に債務不履行が生じた場合にも、損失が発生する可能性があることに注意が必要です。

商品性による損失のリスク

仕組み債には、参照指標(株価・株価指数・金利・為替・商品価格など)の変動によって、受け取れる償還金に損失が発生する場合があります。また、商品によって株式などの有価証券にて償還される商品もあり、その場合には自分で現金化しなければなりません。

一般的な債券投資で共通するリスク

仕組み債は債券の一種であるため、債券に関するリスクも考慮しなければなりません。一般的な債券に関するリスクとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 価格変動によるリスク
  • 信用性に関するリスク
  • 流動性に関するリスク
  • 為替変動によるリスク

価格変動によるリスク

債券を満期まで保有せずに途中で売却する場合、市場価格(時価)での売却がおこなわれます。このとき市場価格の状況によっては、売却価格が購入価格を下回り、損失が発生することがあります。損失を最小限に抑えるには、売るタイミングや市場の動向を見極め、適切なタイミングで売却することが大切です。

信用性に関するリスク

債券には発行者の倒産などによって、利息の支払いや元本の返済が滞るリスクがあります。これを信用リスクといい、投資家は発行者の信用力を判断するために、民間の格付会社が付ける「格付」という評価を参考にすることが一般的です。格付は債券の信用度を示す指標であり、リスクを評価するうえで重要な情報となります。

流動性に関するリスク

債券は、流通市場が存在しない場合や市場の状況が変わると、売却することが難しくなることがあります。売却ができないと、債券を現金に換えることができません。このように債券には、流動性(換金性)が低下することで、投資家が予定通りに債券を売却できないリスクがあります。したがって債券を選ぶ際には、流動性の高さも考慮すべき重要なポイントです。

為替変動によるリスク

外貨建ての債券では、為替レートの変動により為替差損が生じることがあります。たとえば、債券を売却する場合は、売却時の為替レートと購入時の為替レートの差額がマイナスの場合に為替差損が発生します。同様に償還時にも、償還日の為替レートと購入時の為替レートの差額によって、為替差損が生じるケースが少なくありません。為替差損はマイナスの要素となるため、外貨建ての債券を選ぶ際には、為替変動によるリスクに注意が必要です。

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問題視されている仕組み債の販売方法

仕組み債の販売は、ニュースでたびたび取り上げられることがあり、問題視される販売方法が存在します。今回、問題視されているのは、「適合性の原則(金融商品取引法40条)」と「金融商品の説明義務(金融商品の販売等に関する法律施行令)」に違反している可能性があるという点です。

適合性の原則とは、金融商品取引行為において、金融商品と顧客の知識・経験・財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的を照らし合わせ、不適切と認められる場合は勧誘をおこなってはならないことを定めたものです(金融商品取引法40条)。知識や経験が十分でない者への勧誘は、認められていません。

説明義務はこれまでにも定められていましたが、平成13年4月1日から施行された「金融商品の販売等に関する法律施行令」により、概要が明確化されました。この法律では、金融商品の販売業者に対し、金融商品の有するリスクをはじめとする重要事項の説明が義務付けられています。金融庁によると、顧客に重要事項を説明しなかったときは、損害賠償責任を負うものとしています。また金融業者は、勧誘の適正の確保に努めなければならないことも規定されており、違反した場合は過料の対象です(※1)。

金融業者は、仕組み債をはじめとする金融商品を販売する際、これらの法律を遵守したうえで販売しなければなりません。しかし、実際にはこれらの法律に違反するような勧誘がおこなわれているのが現状です。違法性のある具体的な販売事例を事前に把握しておくことで、自身が勧誘をうけた際、損失を被るリスクを軽減できるでしょう。

(※1)参照:金融庁|金融商品の販売等に関する法律の概要

説明が不十分なままでの販売

仕組み債は仕組みが複雑なことから、販売時には、リスクについても十分な説明が必要です。しかし、販売する側は商品の販売を優先するがゆえに、過去には説明が不十分なまま販売したケースがありました。

たとえば、元本保証されていない商品を、あたかも元本保証商品であるかのように説明するなどです。そのほか、利息などのメリットを強調しながら元本割れのリスクを説明しないまま販売された事案も存在します。

適切な情報を提供せずにリスクを誤解させるような販売方法は、先述した「金融商品の販売等に関する法律施行令」の説明義務に違反している可能性があります。加えて、投資家の利益を損なう可能性が高いといえるでしょう。実際に説明が不十分なまま勧誘がおこなわれ、多額の損失を被った事例も少なくありません。説明義務違反を理由とする訴訟も増えていることから、こういった販売方法は問題視されています。

投資商品を選ぶ際には、説明内容に注意し、リスクを正しく理解することが大切です。もし説明で理解できないことがあれば、「情報の信ぴょう性を確認する」など、十分なリサーチをおこなったうえで購入しましょう。

リスクを正常に判断できない可能性のある者への販売

金融機関が仕組み債を販売する際には、投資家の状況やリスクの理解に配慮することが重要です。しかし、仕組み債について正常に判断するのが難しい投資家に対して、販売がおこなわれたケースがありました。

たとえば高齢者や、病気のためにリスクを理解することが難しい者などです。また、投資経験がない方もその場の簡単な説明のみで、リスクを理解するのは難しいでしょう。加えて日本語の理解が不十分な外国人の方も、言葉の解釈の関係上、理解が進まない可能性があります。

上記のようにリスクについて理解が進まず、正常に判断ができない者に対して販売すると、本人が知らないうちに損失を被りかねません。加えて、「適合性の原則(金融商品取引法40条)」に違反している可能性が高いといえます。購入する側に不利益が生じる可能性も高いことから、このような販売方法は問題視されています。

仕組み債販売の現状

つづいては、仕組み債販売の現状について見ていきましょう。

複雑であるにもかかわらず仕組み債が購入される理由

仕組み債は、うまく運用すれば、一般的な債券よりも大きなリターンが(受取利子)を得られる場合があります。これが、利用者の購買意欲を高める要因のひとつです。

しかし、仕組み債には先述のように、さまざまなリスクがあり、損失の方が大きくなるケースも少なくありません。投資ではリターンだけでなく、リスクも念頭に置く必要があります。

また、購入しやすい価格になったことも要因といえるでしょう。以前であれば、仕組み債は数千万円~数億円という高額な商品が多く販売されていました。一方、現在では数十万円から購入できる商品が増えたことで、会社員の方なども利用しやすくなったといえます。こういった背景も、仕組み債が購入されるようになった理由と考えられるでしょう。

苦情や損害賠償請求する事案が増加している

以前は主に証券会社がデリバティブ商品を販売していましたが、金融・証券取引の状況は大きく変化しており、最近では銀行なども、仕組み債や為替デリバティブ商品を販売するようになりました。

とくに、メガバンクが保証のハードルを低くして、ハイリスク商品を販売している状況です。なかでもダブルプット型の仕組み債はハイリスクといわれており、株価が下落すると元本が全損する可能性があります。一方で利用者には、高齢者や投資経験がほとんどない方も多く、仕組み債の複雑さも相まって、リスクが高い状況です。

このような事態を背景に金融庁は、2022年の金融行政方針で、仕組み債販売の体制やガバナンスについて検査することを決めました。これを受け現在では、大手証券会社や銀行を中心に、仕組み債の販売を停止する動きが拡大しています。

仕組み債で損害を被ったときは損害賠償請求を検討しましょう

以前は仕組み債で損失を被ったとしても、「最終的に判断したのは自分自身だから」というような風潮から、泣き寝入りした方も少なくありませんでした。しかし近年では、金融庁が調査に乗り出したことも相まって、訴訟に発展するケースが増加しています。

確かに最終的な判断は本人かもしれませんが、説明が不十分であったり、強引な営業によって購入を迫られたりする悪質なケースも存在しています。また、相手が大手証券会社や銀行の場合、規模の大きさからアクションを躊躇う方も多いようです。

ただ、仕組み債に関する訴訟では、大手証券会社や銀行に対して、賠償命令が下された判決も複数存在しています。強引な営業などによって損失を被ったのであれば、泣き寝入りをせず、損害賠償請求を検討しましょう。

なお、金融商品のトラブルに関しては、全国銀行協会が「全銀協ADR」という紛争解決の制度を導入しています。このADRという制度は裁判外紛争手続きのことで、国から認定を受けたADR指定機関が顧客と販売業者の間に入り、あっせん・調停・仲裁などによって紛争の解決を図るものです。

あっせん・調停は、当事者間での交渉による解決を目的としており、法的な拘束力は有していません。第三者(ADR機関など)が解決策を提案したとしても、納得できない場合には拒否できます。

一方で仲裁は、仲裁を受けることに当事者の双方が同意した場合に、仲裁人(ADR機関など)が解決に至る内容を判断するものです。この判断は「仲裁判断」といい、裁判所の判決と同等の効力を有します。仮に納得できなかったとしても、当事者は拒否できません。加えて仲裁判断が下された事案については、裁判を起こすことができなくなります。

この制度は裁判をせず、話合いでの解決を目指すもので、苦情処理手続と紛争解決手続をおこなうことで、顧客と銀行でのトラブル解決を目指します。

そのほか、証券・金融商品あっせん相談センター(略称: FINMAC)への相談も、仕組み債のトラブルにおける有効な手段のひとつです。こちらは銀行との取引だけでなく、幅広い金融商品の取引について相談を受け付けています。

全国銀行協会やFINMACへの相談は有効な解決策のひとつですが、必ずしも自分が理想とする解決に至るとはかぎりません。ただ、紛争解決の知識がない一般の方が、どの手法が適切であるかを判断するのは難しいでしょう。

自分で判断するのが難しいときや、仕組債による損失をできる限り取り返したいときなどは、弁護士に相談してみるのもおすすめです。

仕組み債が問題となった事例

この章では、仕組み債が問題となった事例を紹介します。訴訟に関する事例もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

事例①

まずは、千葉銀行に関する事例です。千葉銀行と傘下の千葉証券・武蔵野銀行は、仕組み債の販売を巡り、2023年6月現在、行政処分を受ける見通しになりました。

この3社は、顧客に利回りなどを強調した勧誘をおこなっており、投資経験がない方などに仕組み債を積極的に販売していたとされています。さらに苦情が急増した際も対応が不十分であり、業界団体より注意喚起を受けていました。

金融取引法では顧客の知識や経験、投資の目的に沿わない勧誘は禁止しています。この3社の販売は金融取引法に違反する疑いがあることから、公正取引委員会が金融庁に処分を勧告しました。3社は「信頼回復に努める」との見解を公表しており、今後の動向が注目されます。

参照:朝日新聞「(社説)仕組み債販売 銀行への信頼裏切った」

事例②

大手証券会社である野村證券が販売した仕組み債で、訴訟に発展した事例です。

野村證券は2006~2007年にかけて、原告である女性に計1億9900万円分の債券を販売していました。しかし、女性は仕組み債に関するリスクを理解できていませんでした。結果的に約1億2600万円の損害を出したことから、「説明が不十分だった」として、野村證券に対して1億3900万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。

裁判では、「担当者の不十分な説明により、債券の性質を理解できなかった」とされ、販売時の説明義務違反が認められています。ただ一方で、勧誘自体は適法であったとして、原告側の過失も認められたことから、最終的には約4,100万円の支払いを命じる判決が下されました。

事例③

先述と同じく、勧誘時の説明不足による損害賠償を求めた訴訟の事例です。東京都に住む70代の女性は、SMBC日興証券から2014年11月と2015年10月に、2種類の仕組み債計4,500万円分を購入しました。しかし、計2,255万円の損失を被ったことから、「勧誘時のリスク説明義務を担当者が怠った」として、約2,800万円の損害賠償を求める訴訟を起こしています。

判決では販売した2種類の仕組み債のうち、リスクの高い私募債について、「元本割れのリスクが極めて小さいといった真実に反する説明をした」ことが認められました。また、「リスクを理解しうる知識や能力がない女性に対し、危険性のある取引を積極的に勧めた」として、SMBC日興証券に733万円の支払いを命じています。

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まとめ

仕組み債は、高い利回りが魅力の金融商品ですが、リスクの高さにも注意が必要です。証券会社や銀行の担当に勧められたからといって、理解できないまま利用すると、多大な損失を被ることになりかねません。仕組み債は、利益が得られる仕組みや商品ごとのリスクを理解したうえで、購入することが大切です。

もし不当な勧誘により、損失を被った場合には、損害賠償請求を検討しましょう。訴訟により、賠償を勝ち取った事例は複数存在します。状況によっては賠償請求が認められる可能性もあるため、仕組み債での損失で「納得できない」と感じた際は、まずは弁護士に相談することがおすすめです。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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